2010年12月29日水曜日

「GUIオンリー時代」の終わり

その昔、LinuxはCUI(Character User Interface)のOSだ、とよくいわれていました。
CUIとは、コマンドと呼ばれる短い文字列をもちいてコンピュータを操作する形式のことです。

CUIの反対概念を表現する言葉がGUI(Graphical User Interface)。
絵(グラフィック)で表現されたアイコンをマウスで指定することで操作する形式です。

今や「GUIのOS」が当然で、「CUIオンリーのOS」は鐘と太鼓で探さないと見つかりません。その意味では完全に「GUI全盛時代」なのだし、それは当分続くと思います。でも、「GUI至上時代」はすでに終わりを告げているような気がするんです。
今回はそのお話。

かつてのMacintosh――OS 9までのMacは、GUIしか備えていない、まさに「GUIオンリー」のOSでした。
Windowsは本格GUIを採用したWindows95以降も、CUIインターフェイスであるMS-DOSプロンプト(通称DOS窓)を備えていましたけれども、これはその名のとおり、CUIのOSであるMS-DOS時代からのユーザに配慮してつくった機能だったと思います。メニューを注意して見なければ見落としてしまうようなところに、DOS窓はありました。これは現在も変わりません。

ところが、GUIをはじめに実用化し、世に広めたMacが、2001年発表のOS Xから大胆なモデルチェンジをおこないます。
OS X以降、MacはUNIXコマンドを受け付けるターミナルを備えるようになりました。……いや、正確には、Mac OS自体がUNIXになったんですね。

わたし自身は、これをアップル社の怠慢だろうと思っていました。
そう考えた人はわたしだけではなかったと思います(Wikipediaにもそんな記述が見られます)。

OS 9からXへのバージョン変更にあたり、アップル社の急務とされていたのはマルチタスク化です。
OS 9まで、Macはひとつのことをやってると他のことができなかった。
10枚の印刷とかはじめたら、マシンにはふれられず、モニタ見ながらボケッとしてるしか手がないのです。それはMac最大の弱点でした。
今となってはちょっと信じがたい話です。音楽のリスニング・スタイルを変えたのは、なんといってもアップル社のiPodとiTunesです。そのアップルのOSが不自由なシングルタスクで、「音楽聴きながら文書整形」すらできないなんて!

それまでのMac OSの設計思想を生かすならば、「GUIのOS」という専売特許を突き進めてマルチタスク化を成し遂げなければなりません。
ところが、アップルはこれを投げちゃったんです。それまでのOS 9をバージョンアップする形では、マルチタスクにならなかった。それで彼らは、UNIXにMacの皮を着せて、いけしゃあしゃあと「Mac OS」と名乗りました。やつらがつくったのは「皮」だけなのに! ……すくなくともわたしにはそう見えました。
ちなみに、Macはその数年後、一般のPCと同じインテル社製のCPUを採用するようになります。
ソフトウェア的にもハードウェア的にも、Macは「PC-UNIX(LinuxやFreeBSDなど、PCで動くUNIX)」と呼んで差し支えないものになりました。

でもね、こないだ、もしかしたらMacがUNIXになって、CUIコンソールを備えたのは正しいことだったのかもしれないな、と思ったんです。ひょっとするとこれも「アップル社の先進性」のひとつの具現なのかもしれない。……かりに意図してなくても。


2009年秋に、Windows7がリリースされましたよね。7って、すごく使いやすくていいOSだと思います。
XPの後継は7であり、Vistaは一種の試作バージョンだった。
わたしはそんなふうに理解しています。

かつて「MS-DOSプロンプト」と呼ばれたCUIターミナルは、XP以降「コマンド プロンプト」と名前を変えてWindowsに備わっています。でも、所詮はDOS窓、いにしえのMS-DOSコマンドしか受けつけないし、そのコマンド体系はUNIXと比べると「しょぼい」と言って差し支えないものです。

あまり知られてないですけど、Windows7から、従来のDOS窓に加えて「Windows Power Shell」という拡張版CUIを標準装備するようになっています。DOSコマンドはむろんのこと、種類によってはUNIXコマンドも受け付けられるCUIターミナルです。
これは想像ですけど、MacがUNIXになって、「CUIがやばいぞ」って話になったんじゃないかと思うんです。だって、オールGUIだったMacがUNIXになっちゃったら、Windowsだけがお粗末なCUIを備えたOSってことになっちゃうじゃん!

(↓Windows Power Shell。見てのとおりUNIX由来のlsコマンドが通り、ファイルの属性表示もしてくれます)

GUIはとっつきやすさ、わかりやすさにおいてCUIを圧倒的にしのいでいます。
わたしは一部のCUI至上主義者みたいに、「ファイルをマウスでつかんでズルズルひきずる」インターフェイスが特別に不便なものとは思っていません。わたし自身のコンピュータ・ライフもそれでスタートしましたし。
でも、CUIの便利さって絶対にあるんですよね。プログラミングのしやすさは当然ですけど、単純なファイル操作だって、CUIのほうがかんたん・らくちんな局面はたくさんある。
なんのことはない、GUIだけじゃなくて、両方扱えるようにすりゃいいだけの話なんです。「GUIだけ」ってのは、どう考えても行き過ぎなんですよ。
あたりにCUIのOSしかなかった時代に、「GUIオンリー」だったからこそMac OSは輝いたんです。WindowsをはじめとするすべてのOSがGUIを備えて当たり前になっているわけですから、「GUIオンリー」である必然は単なるこだわり以外にはあり得ない。

MacのUNIX化、そしてWindows Power Shellの標準装備には、「GUIオンリー時代」の終わりが表現されているのだと思います。

かつて「CUIのOS」と呼ばれたLinuxも、GNOME、もしくはKDE(わたし自身は使ったことがありません)というユーザ・フレンドリーなウィンドウ・マネージャを備えることにより、ほとんどすべての設定をGUIでおこなえるようになっています。
一方で、元来が「CUIのOS」ですから、CUIターミナルはかならず標準で入っています。同じPC-UNIX(とあえて言わせてもらいます)のMac OS Xよりずっと起動しやすい場所にあって、CUI操作を求めている感じです。
Macとはベクトルが逆ですけど、Linuxも「GUI/CUI両方」の時代に適応するようになったんだな、と思っています。


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2010年12月26日日曜日

「Linuxはプチフリしない」ってホントか?

「プチフリ」ってご存じですか? 
プチ・フリーズ、つまり短い時間フリーズして、OSの動作が緩慢になったり、止まっちゃったりする現象をいいます。

構造上、SSDにはきわめて起こりやすい現象らしいです。最近リリースされたSSDは対策済みのものも多いらしいですが、SSDが古いものだったり、安いものだったりすると、わりと頻繁に起こるらしい。

ちなみに、わがUbuntuマシンThinkPad X41に搭載されているのは、OCZ製の32GB。
ええそうです。古いうえに安いっすよ。

WindowsのファイルシステムNTFSやFATではプチフリが起こりやすいが、Linuxはファイルシステムがまったく異なるのでプチフリは起こらない。SSDを使いたければ悪いことはいわないからLinuxをインストールしなさい、なんて記事はネットに散見されます。
でも……

ウソですからそんなの。

いや、この記事なんか見ますと、「Linuxのファイルシステムはプチフリが起こりにくい」とは言えるみたいです。
裏とったわけじゃないので、「ここまで調べて書かれてるんだからたぶん本当だろう」という程度にしか信用できませんけど。

でも、時折プチフリしてるのは、まごうことなき事実。
するんだもん、じっさい。
これに勝る証拠はない。


わがUbuntu10.10のファイルシステムは以下のとおり。
/etc/fstabをキャプチャして掲載します。


Linuxは起動時に/etc/fstabを読み込んでディスクをマウントするんですよ。
逆にいうと、ここに書かれていないドライブ(たとえば最近あまり見ませんけどSCSI接続のCD-ROMドライブとか)を認識させるためには、ユーザが明示的に指定しなければなりません。

画像中盤ぐらいに見える/dev/sda1というのが、システムがインストールされているSSDですね。
Linuxで最近実用化されたファイルシステム、ext4が使われているのがわかります。

頻繁に書き込みが起こるため、SSDマシンでは仮想メモリのパーティション(スワップ・パーティション)はつくらないほうが良い、というのは知ってましたから、インストール時にいっさい設けませんでした。
……つまり、このマシンはメモリがいっぱいになるとディスクの助けは借りられないんです。たぶん止まるんじゃないかと思ってますけど、怖いのであまりストレスフルな作業はさせていません。

とりあえず「Linuxはプチフリしない」は熱心なエヴァンジェリストがついたウソ。
でもWindowsに比べれば回数はすくない……はずだ、というあたりで納得しております。



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2010年12月24日金曜日

Ubuntuを「最初のパソコン」とするNPO

NPO法人「シニアSOHO小金井」のサイトを見て驚きました。
毎月のように地元の喫茶店でパソコン教室を開催してるみたいなんですが、これが「Ubuntu教室」なんです!

サイトには、Windowsに比べてUbuntuがいかに優れているかが縷々述べられています。熱意はよくわかるし、できれば同意したいんだけど、ちとこじつけっぽいなー、と思えるところがちらほら。
たとえば、UbuntuにはWindowsにおける有料ソフト、Microsoft OfficeやAdobe Photoshopの代用となるフリーのオープンソース・ソフトウェアがある、という話。たしかにOpen Officeは標準で入っているし、Gimpをインストールするのも容易ですから、ウソはついちゃいません。でも、じつはこれって、Windows版もふつうにあるんです。Ubuntuだけのメリットじゃない。
こうした例を排除していくと、「Ubuntuでなければならぬ理由」はかなり希薄なものになってしまうのでは、と思いました。

とはいえ、「Ubuntuを/Linuxを広めよう」というNPO側の意志は大いに伝わってきますし、尊重したいと思います。また、きわめて貴重な試みですから、応援したいですね。

SOHOを目指すシニアの方々のなかには、「パソコンはじめて」という人もたくさんいらっしゃるでしょう。そういう人が「最初のパソコン」としてUbuntuを選択するのは「アリ」だと思うし、案外Windowsよりも使い勝手がいいかもしれないんです。
ソフトウェアのインストールなんかも、「Ubuntuソフトウェアセンター」にあるものだけを使用するならば、「窓の杜」でWindows用ソフトを検索し、インストールするより絶対にわかりやすいし手間もかからない。


かつてLinuxでは、WordやExcelでつくられたファイルを見ることはできませんでした。
したがって、まっとうに仕事をするためには、Microsoft Officeがインストールされた環境――Windows環境が絶対に必要でした。
でも、今ならOpen Officeがあります。
……いや、ファイルの内容を確認するだけなら、Open Officeさえ必要ないんです。GoogleやZOHOのウェブアプリケーション・サービスを利用すればいい。
そんなふうに、「OSの差異」がかぎりなくゼロに近づいているわけですから、Linuxの利用をすすめるのは、正しいことである気がします。イニシャルコストはむろんのこと、ランニングコストもゼロに近いですしね。

最初のパソコンとしてUbuntuを選択したシニアの方々は、どんなふうに利用されているんだろう? すごく興味があります。


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2010年12月22日水曜日

Linuxと日本語(3) ATOK X3 on Ubuntu 10.10

日本語環境があまりに貧弱だったせいで、なかなか常用にいたらなかったLinuxですが、かつて1年ほど、使い込んでいたころがあります。
デスクトップ環境はWindowsにしておいて、ノートでLinuxを使う。メールの送受信とかウェブ・ブラウズとかは、基本Linuxでやっていたと思います。メーラはMule(Emacsの国際版)。ブラウザは好んでw3mを使っていました。

w3mってのはおもしろくて、ウェブページのテキストだけを表示するブラウザです。画像も音声もいっさいなし。当時はまだダイヤルアップ接続でしたから、通信料金軽減のためにも、w3mは一役買ってくれていました。当たり前ですけどテキストだけだとデータの転送が速いんですよ。

ATOK for Linuxの最初のバージョンがリリースされたのはそのころです。今調べてみると2000年ですから、ちょうど10年前ですね。
でも、そのときは入手しませんでした。

なんで買わなかったのかな、と考えてみると、OSがPlamo Linuxだったからだと思います(今思い出した! 書くと記憶って甦るんですね!)。
たぶん、ATOKはSlackware系のディストリビューションにインストールできなかったんだと思います。ATOKをつかうためには、Red HatとかVineとかTurboとか、「RPM系」と呼ばれるディストリビューションに乗り換える必要があった。

どうしてもATOK欲しい、と思えば乗り換えたんでしょうけど、あまり必要を感じなかったんです。当時の私の日本語入力環境はCannaでしたが、友人がお粗末なCannaのユーザ辞書に、Windows版ATOKの豊富な語彙を加えるPerlプログラムをつくってくれていました。
Cannaは辞書はアホでしたけど動作は異様なほど軽快ですから、けっこう好ましい環境ができあがっていました。GUIデスクトップ環境X Windowを立ち上げず、コンソール画面でEmacs(Mule)を立ち上げてメール書いたりしてたのはそのころですね。表示できるのは黒地に白のテキストのみ! ムダを極限まで削ぎ落としたコンピューティング。……まあ、早い話が自己満足で、「ムダがない」ところが気に入っていたんだと思います。

UbuntuはCtrl+Alt+F2で簡単にコンソール画面に切りかわりますけど、残念ながらこのコンソール、日本語表示ができません。日本語を出すには、たぶん懐かしの日本語コンソールkonをインストールしなければならない*んでしょう。導入も考えてみたんですが、ATOKはコンソールでは使えないからあまり意味がない、と気づいてやめました。現在の日本語入力はそれだけATOKに頼り切ってるわけです。
(* 現在はkonではなくfbtermを使用する模様。)

そのATOK for Linux X3ですが、リリースされたのが2007年。以来、一度もバージョンアップされていません。ATOKのバージョンだってVer.20です(2011年2月発売のWindows用最新ATOKはVer.24)。



一方、UbuntuはじめLinuxのほうは頻繁にバージョンアップしますから、以前のATOKではインストールすらままなりません。ジャストシステムはいくつもパッチをリリースして最新Linuxへ対応していますが、おかげでインストールはどんどんめんどくさくなっています。
まあ、Linux向けのATOKなんて売れるとは思えないから、無償でパッチをリリースして最新Linuxについてきている、という点を評価すべきだと思います。よくやってるよジャストシステム。


そうそう、ATOK for Linux X3をUbuntu10.10にインストールすると、ちょっとした不具合が出るんですよ。これは書いておいたほうがいいだろうな。

LinuxでATOKをを立ち上げると、エディタやコンソールのウィンドウ左下に「IIIMFステータス」と呼ばれる小窓が表示されます。正常な状態だと、ここに「ATOK」と書かれた起動を表す文字が出るんですが、Ubuntu10.10ではこいつがイカれていて、真っ黒で意味不明な小窓になっちゃうんです。
(ごめんなさい、スクリーンショット撮っておけばよかった……)

対応策はこれ。IIIMFステータスごと非表示にしちゃう。
要は見えなくしてるだけですから不具合はそのまんまなんですが、ステータス表示が必要な局面はありませんから問題ないでしょう。Windowsにはこんなのないし、むしろスッキリしていいと思います。
どうせならインストール時のアップグレード・パッチにふくめときゃいいのに、と思うんですが、そういうわけにもいかないんでしょうね。


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2010年12月16日木曜日

Ubuntuをもって街へ出よう(LinuxとAndroid)

当初は改造するだけで満足して、大して使わないはずだったわがThinkPad X41ですが、結局、毎日のように使うことになり、本格的に再生する必要に迫られました。

いや、マシン本体は元気なんですよ。液晶もまだ暗くないし。
でも、バッテリーが完全にイカれてたんです。Ubuntuくんも「38パーセントしか充電できません」とエラーメッセージを出す始末。
もともと2時間しかもたないバッテリーの38パーセントですから、計算するのもイヤになるぐらいちょっとしかもちません。ACアダプタなしの運用は考えられなかったんです。

でも、これだけ使えるとなると、外に持ち出したくなってくる。
それで、買っちゃいました。
ヤフオクで約5000円、でっかい8セルバッテリー。6時間近くもつんですよ!
わがUbuntuマシンも完全にネットブックとして復活だ!

これでわたしの大好きなノマド・ワーキング(クルマで空気のいいところに出かけて、ひたすら入力作業)することができます。


このとおり後ろがハミ出てて不格好なんですが、この際見た目は気にしないことにいたしましょう。
たしか、オンキヨーのやたらバッテリー駆動時間が長いネットブックもこんな感じだったはず。
こんど、一緒にドライブに行くのさ!

ちなみに、この写真はAndroid(Experia)で撮影し、Ubuntu(X41)のファイルマネージャから開いたもの。Androidユーザのみなさん、LinuxでもAndroidのSDカード、のぞけますよ。


このとおりPHONE CARDとして認識されます。
むろん充電もできまっせ!


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2010年12月14日火曜日

Emacsというエディタ

大して使いやしないくせに、わたしのUbuntuにはEmacsがインストールされています。
デフォルトでは入ってないんですけど、「最新のEmacsを使ってみたい」というヘンな好奇心と義務感によって、わざわざインストールして入れてあるのです。
たまーに気分が乗ると、これで文書を書いたりしています。
使い勝手は……残念ながらあまりいいとはいえません。だって、わかんないんだもの。

Emacsは「なんでもできる」オールマイティなアプリケーションです。


本業はエディタ……ということになっていますが、その能力はエディタのワクを大きくハミ出し、ウェブ・ブラウズもできるし、メーラにもなる。コンソールにもなる。プログラムのコンパイルだってできる!
Emacsは、PC上のほとんどあらゆることをたったひとりで解決しちゃう凄いやつ、なのです。

でも、それゆえの欠点がひとつ。
「なんでもできる」を実現するために、Emacsは操作が複雑です。たいがいのソフトウェアは「慣れないと使いこなせない」側面をもっていると思いますが、その点が突出している。

使いこなすことができれば限りなく便利だと思いますし、設定ファイルをいじってその能力を極限まで引き出せるならば、こんなに優秀なやつはそういないでしょう。
でも、いかんせん設計思想が古すぎる。非力なネットブックですらブラウザとエディタとコンソールを同時に立ち上げていても、まっとうに動くでしょう。「なんでもできる」がすでに理由をなくしています。

「なんでもできる」は、マルチウィンドウが存在せず、単一コンソールですべてをこなす必要があった古い時代に要請された機能だったのだと思います。

今Emacsを使ってるのは、古い時代から使っていて、Emacsの能力を存分に引き出せる猛者だけじゃないかな。
当然のこと、わたしには使いこなせません。

だったらなんで入れてんのよって話ですが、単純な話、懐かしいんです。
かつて頻繁にLinuxを使用していた一時期(10年ほど前でしょうか?)、もっともよく使っていたアプリはEmacsの国際版(日本語対応版)Muleでした。
当時、メールの送受信はMule/Emacsでやるのがふつうだったし、日本語対応しているエディタ自体、あまりなかった。それゆえの選択でした。

これは今でもそうですけど、EmacsはGUI環境だけではなく、コンソール画面でも使うことができます。世代的にコンソールは珍しい世代(はじめてのPCがWindows95)ですから、新鮮味もあって、あえてコンソールでメール書いたりしてましたよ当時は。うーん懐かしい。

「ああEmacsだなあ」と思いたい。
今、わたしがEmacsをインストールし、すくないディスクスペースを占有させてる理由はそれだけです。常用しようとも覚えようとも思わないけど、ときどき立ち上げたい。ほとんど観賞用ですね。
Ubuntuを使っていると、それがLinuxであることを忘れてしまうんです。それほどストレスなく使えてるってことですが、たまにこういう歴史的遺物を見て、長い長いUNIX文化を忍びたくなるのかもしれません。
歴史的遺物なんて言うな! まだバージョンアップしてるだろ! といわれればその通りだけど……Emacsの最初のバージョンって、パソコン誕生よりずっと古いんですよ。そこまで歴史あるソフトはそうそうないでしょ?

Emacsはあの「ハッカー界の聖人」リチャード・ストールマンがつくったソフトウェアです。

マイクロソフトやアップルなど、ソフトウェアを売ってお金を儲けようとする企業を「社会の害悪」と断じ、「フリー・ソフトウェア運動」を展開して戦い続ける革命戦士。ストールマンいわく「フリー」は「タダ」ではなく、「自由」を意味します。彼は自由のために戦う男なんです、まちがいなく。
でも、断じて理念に凝り固まった左翼活動家じゃない。本人はかぎりなくウィットに富んだ知性の持ち主で、発言がとにかくムチャクチャにおもしろいんです。ハーバード→MIT研究所の大天才のくせに(大天才だから?)、あえてヒッピー風のルックスを変えようともしないところも大好きです。

(↓こういうオッサンです)


フリー・ソフトウェア運動って、納得できることがすごく多いんですよ。
これについては、いずれ稿をあらためて述べてみたいと思っています。











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2010年12月11日土曜日

ATOK for Androidトライアル版 ユーザー辞書の登録

ATOK for Androidトライアル版がリリースされました。さっそく手持ちのExperia(Docomo/Sony Ericsson)にインストールしてみました。

携帯電話各社とも、「来年の主力商品はスマートフォン」と宣言していますよね。すでに数々の新製品リリースがアナウンスされていますし、その後も続々と新しい機種が発表されるはずです。
中心となるのは、まちがいなくAndroidでしょう。
現在市場に出回っているスマートフォンは、「ガラケー」のいくつかの機能――ワンセグとか、赤外線通信とか、絵文字とか、おサイフとか――を備えていないものが多いんですが、そういうものを搭載するのにも、Androidは打ってつけなんです。
なぜって、Androidはオープンソースだから。携帯電話メーカーが好きなようにいじることができる。しかも、GoogleはAndroidを各社に無料で提供しています。そのあたりの理由もあって、たぶん爆発的に広まるでしょう。

これはスマートフォン後進国、日本だけの現象なのかな、と思っていたのですが、すでに携帯電話ユーザの6割以上がスマートフォンを使っている米国でも、Androidユーザの増加率はすさまじいと聞く。Google恐るべし、といったところでしょうか。

さて、ATOK for Androidです。
スマートフォンの日本語入力環境はまだ群雄割拠時代。しかも、Androidにおける敵は目下のところWnnとSimeji。ジャストシステムとしても十分な勝算を見込んでの参入ではないでしょうか。

インストールは超簡単。マニュアルどおりにやれば、難なく試用することができます。
こんな感じ。


特徴的なのは画面に花が開いたように見える「ジェスチャー入力」ですね。むろん、従来の「フリック入力」「キーボード入力」も可能です。まだちょっと使ってみただけですが、予測候補としてあげてくれる単語もトンチンカンなのがすくなく、思ってたよりずっといい感じ。
ジェスチャー入力は慣れるとけっこう速く入力できそうです。ATOK for Android、買うかも。


ATOK for Androidが素晴らしいのは、Windows版ATOKのユーザー辞書の移行ができるところです。これはあまりレポートしてるサイトがないみたいなので、ちょっとだけていねいにやってみましょう。
あ、わたしはWindowsでやっちゃいましたけど、手順はATOK for Linuxでもほとんど変わらないはずです。

WindowsのATOKメニュー[辞書メンテナンス]から[辞書ユーティリティ]ウィンドウを立ち上げ、[ツール]メニューから[単語・用例の一覧出力]を開きます。


「ファイル名」欄に適当なファイル名を入力しますと、ATOKのユーザ辞書をテキストファイルに書き出すことができます。
ただし、ATOK for Androidはユーザ辞書登録単語数は1167語と限りがありますから、「単語種類」のチェックは「登録単語」だけにしておきます。「対象品詞」も名詞のみに絞りました。

こんな感じでテキストに書きだしてくれます。


登録単語数にもよりますが、わたしの場合はテキストに書き出された単語数は4000に近く、とても1167語に収まりません。そこで、エディタでテキストを開いて、必要な単語700程度に絞りました(手作業ですから、かなりめんどいです)。

続いて、単語数を絞ったテキスト(ここではandroid-atok.txt)を、Android本体のSDカードに移動します。
わたしはDropboxにつっこんで同期させましたが、むろん、AndroidをPCにUSB接続して適当なフォルダに入れたってかまいません。

Androidの[設定]メニューから[ATOKの設定]→[ツール]→[辞書ユーティリティ]を開いてメニューボタンから[一括登録]。さきほどのandroid-atok.txtを指定しますとキッチリ読み込んでくれます。


Windows版ATOKのユーザー辞書、ぜんぶ読み込んでくれたらどんなにいいだろうと思うんですけど、それは贅沢なのかな、とも思います。1167語はスマートフォンの辞書としてはかなり多いみたいです(Wnnは500語しか登録できないとか)。
でも、これからスマートフォンでのしていこうってんなら絶対に改良すべき点だと思いますけどね。だって、「PCと連携できる」ことがスマートフォン最大の利点なんですから。



……えっ? この話Linuxとは関係ないって?
いやいや、AndroidはLinuxベースですぜ。忘れてもらっちゃ困る。
コマンド入力できるわけでもないし、似ているところはオープンソースだ、というところぐらいですが。

なお、ここに掲載したスクリーンショットはWindowsを利用して撮影しています。Androidって、機種本体だけでスクリーンショット撮れないんですよ! これはAndroidがiPhoneに大きく劣る部分のひとつだと思います。
スクリーンショットを得るためには、PCに「開発環境」をインストールし、アプリ開発できる環境を構築しなきゃならない。Windowsでもけっこう煩瑣な手順を踏みます。Linuxに同じ環境を導入するのは……ごめん、めんどくさかった。




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Except Screenshots were taken from Windows 7 on Thinkpad X200S.

2010年12月8日水曜日

ThinkPad X41再生術 (OCZ SSD 32GB)

 ブログの統計見ましたら、「X41 SSD」で検索していらっしゃる方が案外いるんですね。情報はいっぱいあるような気がしましたが、いわれてみればけっこう探したかもしれません。そういや、「X41のSSD化は不可能」とか、「OCZのSSDとは相性が悪い」とか、改造に二の足踏んじゃうような記事もずいぶん見た気がします。
 以下、わたしのX41改造&Ubuntuインストール記(ほかの日記ブログに書いたもの)の抜粋です。X41復活を計画中のみなさん、リンク集として参考にしてください。

**************************************************

 改造に使用するSSDは、Yahoo!オークションでOCZ製の32GB(OCZSSDPATA1-32G18)を入手しました。8500円。まあ、安価だったといっていいんじゃないでしょうか。

 X41はSSD化が難しい、という記事はネットに散見されるんですが、そんなことはございません。要は、BIOSがハードディスクじゃないドライブにたいしてビープ音を鳴らし、立ち上げてくれなくなっちゃうんですが、設定をちょいといじれば解決するんです。

BIOS設定法
http://bestock.dtiblog.com/blog-entry-76.html

改造の手順はX40と同じです。このサイトでは私と同じOCZのSSDをX40にのっけてます。
http://hisway.at.webry.info/200905/article_4.html

ハードディスクはネジ一個はずすだけで取り出せますから、うまくやればそれだけで改造できるんですが、背面のネジをぜんぶとって筐体を開いてやった方が結果として早道かもしれません。具合を見ながらSSDを差しこむことができるので。SSDが認識されているかどうかは、電源を入れてBIOSみないと確認できません。分解はX41のマニュアルを見ながらやるのがオススメです。改造しろとばかりに丁寧なマニュアル。こういうところが大好きさThinkPad。
http://www-06.ibm.com/jp/domino04/pc/support/Sylphd11.nsf/jtechinfo/SYM0-02FCEE

 SSDが認識されたらOSのインストールですが、私はUbuntu Linuxの最新版10.10を入れました。インストールだけならWindowsより百倍ラクです。
 
 とはいえ、LinuxはLinux、めんどくさいこともあります。ノートのフタ閉めるとサスペンドするんですが、開けても復帰しないという症状に悩まされました。フタしめたら泣く泣く電源を落とし再起動するしかないんです。これじゃ、とても使えません。
 調べまくったらありましたよ、対処方法が。
http://kimamahitori.blog.shinobi.jp/Entry/232/

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ということで、X41の再生を検討中のみなさん、是非チャレンジしてみてください。別のマシンに生まれ変わりますよ。
Happy Hacking!


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2010年12月6日月曜日

Picasaインストール [Ubuntu10.10]

先月の最初のころですからもう1か月も前になりますけど、友人と奥多摩のさらに奥、日原に遊びに行ったんです。登山ならぬ山遊びですね。
ほのかに色づいた木々に囲まれ、渓流のわきで火を焚きつつ、焼き芋なんぞを焼きながらしたたかに酩酊する遊びです。日帰りだとクルマが使えないのでエライ遠いのが玉に瑕ですが、日々の生活で積もったココロの垢みたいなものはだいぶ落とすことができます。

デジカメ写真も撮影したんですけど、忙しくてPCに取り込む暇もありませんでした。今日、寸暇ができたのでウェブにアップロードし、友人に公開することにしました。
どうせやるならLinuxでやろうと思い、Picasaをインストールしてみることにしました。

現行バージョンは2.7ですが、こいつが不具合出まくり。大いに悩みました。
ようこそ、Linuxの世界へ!

インストールは簡単なんですけど、いきなり起動しません。
ターミナルがエラーメッセージを出しています。


設定ファイルが「Segmentation Fault」を起こしているので読み込めない、というわけですが、それがわかってもどう直していいかわかりません。
さんざん検索かけると、海の向こうのFedora Forumに同じ症状で悩んでいる人がいました。

LinuxエキスパートDangermouseさんが「dirty fix」つまり「美しくない解決」として次のような方法を教えてくれています。
彼の解決策はFedora向けですから、管理者権限(su)の扱いに少々ちがいがあります。Ubuntu向けに多少直して記述しますと:

~$ sudo sysctl -w vm.mmap_min_addr=0

sysctlはカーネルをチューニングするためのコマンド。
どうやら、けっこう深いところで問題が起こっていたらしい。Dangermouseさんによれば、nvidia driverとカーネルの問題だそうです。

みごとPicasaは起動しました。……が、この調子です。



ファイル名がハガキの郵便番号記入欄みたいになってるの、わかりますか。そう、文字化けしてるんです。
ああ、これぞLinuxの世界!

もっとも、文字化けはわりと一般的な問題で、修正法は日本語のドキュメントがたくさんあります。Picasa 2.7の直し方も見つかったんですけど、けっこうめんどくさい。
立ち上げるのだけでも大変だったんですから、もう、じゅうぶんLinuxの世界は体験しました。いーかげんラクしたくなってます。
いろいろ調べてみますと、Picasa3.0のベータ版がリリースされているという。こっちも文字化けするようなんですが、修正はラクそうです。

結局、苦労して起動するようになった2.7をアンインストールし、3.0ベータを入れ直しました。文字化けの解決はここにあるとおりにやるとスッキリ直ります。

Ubuntuユーザのみなさん、Picasaは最新3.0がオススメですよ!

かくして、Picasaは正常に起動し、たった今、友人に公開設定したウェブアルバムのURLを送ったところです。


……めんどい。めんどいっす。
たかだかPicasaのインストールでなんでこんなに悩まにゃならんのか。
Windowsならボタンひとつだぜ。

でもね、けっこう楽しかったりもするんですよ。
海の向こうのハッカー(システム破りをするやつじゃなくて、モノホンのエキスパートって意味です)の書き込みを、錆びついた英語力つかって読解するなんて経験は、「Linuxの世界」を彷徨しないと味わえないですから。

案外、苦労して日原まで行くのと似てるのかもしれないな、と思います。
日原は電車2時間半+バス40分の道程です。


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2010年12月5日日曜日

Linuxと日本語(2) 愛しのATOK、愛しのジャストシステム

 日本語変換ソフトウェアATOKの開発企業ジャストシステムは、手放しで大好きな会社です。
 本社が四国徳島にある、というだけでなんだか応援したくなるじゃないですか。ATOKは日本全国にユーザがいるだろうに、ジャストシステムは創業以来ずっと地方企業なんですよ! そのあたりも好きなところです。
 利潤を得るためではなく、会社をサポートするつもりで株買おうかと思ったこともあるぐらいです。めんどくさいので買ってないですけど(ジャストシステムの人ごめんなさい)。

 わたしのコンピュータ利用は、いつだってATOKとともにありました。日本語入力はATOKに尽きる、と思い続けてきたし、今でもそう思っています。

 でもね、今後はきついだろうな、と思っていたんです。

 いや、敵がMicrosoft-IMEであるかぎり、ATOKの優位は続くと思うんですけど、「ウェブ検索に使われた語彙をもちいてオンラインで変換する」というコロンブスの卵的発想を実現したGoogle日本語入力が出てきたんです。これを見たときに、「ああ、ジャストシステムやばいかも」と直感的に思いました。

 わたしはATOK大好きジャストシステム大好きですから、Windowsでも変わらずATOKを使ってますけど、試用したとき、Google日本語入力はかなりイイと思いました。
 なにより、「予測変換」が可能なのは大きいですよね。
「こう」と入力すれば「工場」とか「高校」とか「こういう」とか……いろんな候補を出してくれる。携帯電話の漢字変換では当たり前ですが、Microsoft-IMEにもATOKにもこの機能はありません。
 また、ウェブ語彙に強いのも特徴のひとつで、「わろ」と入れると「ワロス」とか「ワロタ」とか、ウェブ・オリジンな単語を候補にあげてくれます。
 決定的なのは、タダだってことです。Google日本語入力は誰でも簡単にインストールでき、その際の費用はいっさいかからない。ここは、ATOKにはひっくりがえっても太刀打ちできないところです。

 ジャストシステムやばいかも、というのは、ソフトウェアをバージョンアップして売り続ける、というスタンスは、もうIT企業として古いんじゃないか、と思ったせいです。じっさい、わたしが使っているWindowsのソフトウェアで、お金を払って買っているのはATOK(一太郎)だけ。それも数年に1度だけです。「ソフトを買う」ということ自体、とてもまれなことになっています。

 Google日本語入力はタダですから、どうやったって勝てない。しかも、あっちは世界有数の大企業ですけど、こっちは四国徳島の地方企業です。企業としての体力もぜんぜんちがう。戦ってどっちが勝つかは目に見えていますし、戦う気でいるのはこっちだけで、向こうはこれで儲けようとしてないんだから勝負にすらならない。
 ジャストシステムやばいかも、って思うでしょ?

 でも最近、ジャストシステムは思ってたよりずっとしたたかなんだな、と知る事件がありました。

 小学校に通う息子の授業参観に行ったんです。「パソコン室」という部屋に入って、自分が子どもだったころには受けられなかった授業を見ることになりました。「ねんがじょうをパソコンでかいてみよう」が授業内容でした。

 その教材が――子供向けATOKと一太郎がセットになった「ジャストスマイル」だったんです。
 こんなもんがあるとは全然知らなかった! これ、商売相手は教育機関、親方は日の丸ですよ。しかも、かなりの数をさばくことができる。こんなところに食い込んでるなんて思いもしませんでした。

 Google日本語入力を標準の変換ソフトにして学校で使おう、という話には絶対にならないはずなんです。なぜなら、「ウェブ語彙」は制限がきかないから。
 こういうところに入っていけるなら、もうしばらく安心かもな、と思いました。

 ……あれ? Linuxの話じゃないなこれ。

 最後にひとつだけ。Google日本語入力にLinux版はまだありません。とはいえ、すでにMozcという名でオープンソース・プロジェクトがスタートしており、導入するのもそう難しくないみたいです。
 Googleが近々リリースする(と去年から言っている)Chrome OSはUbuntuベースですから、たぶん日本語変換はMozcを使うことになると思います。


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2010年12月4日土曜日

Linuxと日本語(1) 日本語という言語の特殊性

 かつて、日本のパーソナル・コンピュータの9割はNECのPC-9800シリーズ(通称キューハチ)だったそうです。割合としては現在のWindowsパソコンと変わらないわけで、独占と呼んでいいシェアだと思います。まあ、大昔の話ですから数は決して多くなかったと思いますけど。

 どうしてキューハチがそれほどのシェアを誇っていたかというと、ハードウェアに日本語表示システムを組み込んでいたからだそうです。MS-DOSに日本語を表示するにはその方法が適当だったんでしょう。
 日本のPCが世界標準のPC/AT互換機になるのは、Windows95がリリースされ、日本語の問題がソフトウェア上で解決できるようになってからとか。

 日本のPC利用は、常に日本語表示/入力の問題とともにありました。

 コンピュータ利用における英語/日本語のちがいは、単なる言語の相違以上に大きいんです。
 英語は1バイト文字(半角)256種ですべてのアルファベットと記号をカバーすることができます。それだけあればどんなに複雑な文章であろうと表現することができる。
 ところが、日本語には漢字・ひらがな・カタカナの3種の文字があり、全角2バイト6万以上の文字種を得なければ表示できません。それだけあっても足りてないのが現状です。
 入力の際にもかならず「漢字変換」の機構が必要ですから、じつは「日本語の表示/入力ができる」というだけで相当のシステムリソースを消費しているのです。同じマシン上の同じソフトウェア、たとえばExcelを使って入力作業をする場合でも、日本語Excelのほうが挙動が鈍くなります(正確には、Excel日本語版は英語版と同じソフトではありません)。
 ことコンピュータへの導入だけに着目すれば、日本語はきわめて使い勝手の悪い、不便な言語だといえます。

 ……と、いうようなことを如実に理解できたのが、以前のLinuxでした。

 大昔、わたしは「はじめてのパソコン」Windows95マシンにSlackware Linuxをインストールし、デュアルブート環境をつくって悦に入っていたんですけど、「日本語の問題」ってすごく大きかったんです。
 当時はまだ日本語のLinuxディストリビューションはリリースされておらず、まず英語版のSlackwareをインストールし、そこにJEと呼ばれる日本語パッケージを入れて運用していました。日本語変換エンジンとしては、JEにふくまれるCannaまたはWnnを利用するのが一般的でした。

 CannaもWnnも、Windows上のATOKと比べると本当にお粗末なソフトでした。変換効率がぜんぜんちがう。
 当然といえば当然なんですけどね。CannaもWnnもフリーのオープンソース・ソフトだったんですけど、日本語変換なんて日本人しか使わないから、開発者の絶対数がすくない。オープンソース・マジックが効きにくい。
(「オープンソース」という言葉は当時まだなかったと思います)

 当時よく思ったのは、自分が英語圏に住んでたらLinuxを常用できたのになあ、ということでした。
 Windows95は安定性にかなり問題のあるOSでしたから、「恐怖の青画面」(知ってる人はオッサン/オバサンです)に出くわすことがとても多かった。そういうことのないLinuxはすごく魅力的に思えたんです。

 でも、日本語環境のお粗末さが、Linux常用をかたくなに阻んでいました。けっこうこういう人は多かったんじゃないかな、と思います。

 だから、それから何年かして、ジャストシステムがLinux版のATOKをリリースしたときは嬉しかったですねえ。
 もっとも、すぐには導入しなかったんです。なぜって……と話し出すと長くなりそうですので今回はこのへんで。

 そうそう、Cannaがその後どうなったかは寡聞にして知りませんが、Wnnは現在、携帯電話の変換エンジンとして活躍してるんですよ。Androidのデフォルト変換もWnnです。


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2010年12月2日木曜日

クラウド・マシン X41

わたしのUbuntuマシンのシステム情報はこんな感じです。


マシンはThinkPad X41。IBMがつくった最後のThinkPadです。ハードディスクが激遅のために、よほど愛している人じゃなければ、お払い箱にしてしまうだろう悲しいコンピュータです。
だってさ、3万円も払えばネットブック買えちゃうもん。激遅ディスクのX41を使い続けるよりは、そっちのほうが絶対にキモチよく使えるはずなんだよね。

わたしはこのマシンの激遅ディスクを、OCZ製SSDに変えて運用しています。すると、ネットブックに比肩するか、ちょっとは速いPCになるんですよ。

これは再生させてから気づいたんですけど、X41はキーボードが傑作なんです。今のわたしのメインマシンは同じThinkPadのX200Sですけど、キーボードだけを比べると、X41のほうがいい。ライティング・マシンとしては最高の環境だな、と思っています。

ただし、上の情報を見てもらえばわかるんですけど、SSDは32GBですから、空き領域が20GBしかありません。今後のことを考えれば、データの保存はできない。また、CPUが時代遅れであるために、現代の(……というのは気がひけるんですけど、X41は明らかに過去のマシンです)重いアプリケーションの運用には向きません。

Ubuntuは本当にたくさんのアプリケーションがあって、いずれここでもいろいろレポートしていきたいと思ってるんですけど、必然的に「軽いアプリ」をもとめることになります。

エディタはLinux版「メモ帳」といえるLeafpad。
ブラウザはGoogle Chrome。

主に、このふたつだけを動かす感じで使っています。それであまり不自由はしないんですよね。
(もちろんGNOMEデフォルトのCUI端末や、ファイラnautilusはガンガン使ってますけど)

これはX41の現役時代には難しかったことだと思います。

「クラウド」という流行語は意味が漠然としすぎているのであまり好きじゃないですが、ここ数年でウェブ・サービスは本当に充実しました。こうしたサービスを積極的に利用すれば、古いPCだって立派に現役で行ける。メーラはGmailだし、EvernoteもChromeの機能を使って運用しています。

X41のSSD化は、デフォルトOSのWindowsXPを入れたりすると、けっこうトラブルもあるみたいなんです。ネットにはそういう「失敗レポ」がたくさんあります。
でも、Ubuntuなら大丈夫。問題なく使える。
X41を再生させたのは、改造に使用したSSDでも、それを試みたわたしでもなく、Ubuntuなのかもしれないな、と思っています。



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